タフトライド・イソナイト(塩浴軟窒化)について
当社への相談や問い合わせで、タフトライドとイソナイトの質問が多かったため、当社なりにまとめてみました。
図面ではタフトライドやイソナイトと表記してありますが、 タフトライドやイソナイトは商標なので、JISでは「塩浴軟窒化」の熱処理となっています。
タフトライドとは
「塩浴軟窒化」の通称で、窒化硬化処理の一種「タフトライド法(tafftriding)」と呼ばれ、デグサ社で開発された方法です。
「タフトライド法」は塩浴としてXCNO(XはNaまたはK)を用い、570℃の低温でチタン容器の底から空気を吹き込み、鉄鋼及び鋳鉄部品を処理することを特徴とし、従来のガス窒化に比較して短時間で処理でき、鋼種による制限は特にありません。また耐摩耗性・耐かじり性の向上に役立ち、処理温度が低いことは変形がきわめて少ないです。しかしシアン酸塩を使用するので環境問題に厳しくなった現在では、公害防止対策が不可欠ですが近年低公害用としての「タフトライド法」が開発されています。
「日本工業新聞社著者 熱処理用語辞典」より引用
イソナイトとは
タフトライドは、ドイツのデグザ社の特許で商標権を持っていました。また日本のメーカーが契約によって商標権(タフトライド)を使う許可をもらっていました。そのメーカーは独占的に商標権を持っていたのですが、2007年に独占契約の交渉が決裂し、日本のメーカーは「イソナイト法」として商標権を登録したわけです。
従って タフトライドとイソナイトは中身は同じ熱処理で、窒化処理の一種で「塩浴軟窒化」熱処理ということなのです。
熱処理方法は、鉄の変態温度以下500~610℃程度の低温で熱処理し、鉄中にN、C、O元素を浸透させます。
タフトライド同様、塩浴軟窒化処理製品の表面は化合物層、その下に拡散層を形成し、化合物層は優れた耐磨耗性、耐焼付性、耐かじり性を示し、拡散層は材料の疲労強度を著しく増大します。
上記にもありますが、シアンを含有する塩浴剤により問題解決をしなければならないということもあり、現在では「無公害液体軟窒化」が生まれました。
では、どんな材質が熱処理できるのか…
材質 |
表面硬度(HV)
|
実用窒化層深さ(㎜) |
SPCC |
400~500
|
0.05~0.1
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SS400 | 400~500 |
0.05~0.1
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S45C/S50C | 450~600 |
0.05~0.1
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SCM440 | 750~850 |
0.05~0.1
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SKD61/SKD11 | 1100~1300 |
0.05~0.1
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SACM645 | 1100~1300 |
0.05~0.1
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SUS304 | 1100~1300 |
0.05~0.1
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FC/FCD | 500~600 |
0.05~0.1
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※数値は標準処理での参考値です。
当社では「塩浴軟窒化」の熱処理は委託先にて処理が可能です。
委託先は、無公害液体軟窒化でも熱処理できますので、「塩浴軟窒化」や「窒化熱処理」の見積依頼などは、お気軽にご相談下さい。